私の好きな聖書の一節に、「わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる。」という言葉があります。(マタイ28・20)もちろんこれは、イエスさまの、私たち一人一人に対する約束の言葉ですが、この言葉にいつも励まされています。
私が望むと望まざるとに関わらず、また、神さまが必要な時もそうでない時も、いつどこにいても、イエスさまは「あなたがたと共にいる」と約束してくださったのです。
実際、心が沈み落ち込んでしまった時や、助けが本当に必要な時に、この言葉を思い出して、力やなぐさめをいただくことがあります。また、目の前に立ちはだかる高い壁を前にして、くじけそうになってしまった時に、この言葉に奮い立たせていただくこともあります。
様々な司祭の務めを果たすにあたって、この「共にいる」というイエスさまの約束は、本当に力強い一言です。幾度となく助けられてきました。
しかしながら、このイエスさまの約束に対して、私もいつも共にいただろうか、と思い起こすと、必ずしもそうではなかったことに気づきます。別のことに関心を向けていたり、自分中心の生き方に走ったりした時には、イエスさまが共におられることに真に寄り添ってはいなかったのだと思います。
いつも共にいてくださるイエスさまから、心が離れていたとしても、イエスさまの存在に気付かなかったとしても、それでもイエスさまは共にいてくださいます。私たちの心のあり方や、生き方がどうであっても、です。
私たちを最大限に尊重してくださるイエスさまは、私たちのあり方を静かに見つめながら、いつも寄り添い続けてくださいます。
このイエスさまの存在にいつも心を向けて、共に歩み続けていきたいと願っています。
長く児童図書出版社の編集者・社長職に就かれ、児童文学者としてもご活躍の松居直さんが、なぜ子どもの本に携わるようになったか、お聞きしたことがあります。
その理由は、松居さんが幼児の頃の、お母さんとの楽しい思い出があったからです。
松居さんは6人兄弟の5番目で、当時お母さんは朝から晩まで忙しく働いていました。
そんなお母さんが夜寝る前に、ふとんの中で絵本を読んでくれました。いつも先に寝るのは仕事の疲れでぐったりしていたお母さんのほうでしたが、その時間は松居さんにとって、一日のうちで一番楽しい時間だったのです。それは大好きなお母さんと共にいて、お母さんの愛情をめいっぱい感じることができたからです。
この子どもの頃の幸せな経験が松居さんの仕事の原点となり、原動力となったのですね。
私が大人になって絵本に興味をもち絵本を書き始めたのも、思い起こせば私の幼児体験にも同じような温かな思い出があったからです。
絵本を読み聞かせするとき、親子は同じ時間、同じ場に共にいることができます。そうして、絵本を通してふれあい、互いに愛情を交流させる機会を得ることができるのです。
その時間は子どもにとって、忘れがたい貴重な思い出になるに違いありません。
ところで、神様は私たちと共にいて、同じようなことをしてくださっています。
もちろん絵本の読み聞かせではありませんが、この世界の現実の物語を通して、私たちに語りかけてくださっているのです。
昨日起こった物語にも今日起こる物語にも、共にいらっしゃる神様の働きかけがあります。
現実の様々な出来事を通して、いつも私たちに豊かな愛を示してくださっているのです。