わたしの今の役割

新井 紀子

今日の心の糧イメージ

 私が5年前に作った大沼羊文化研究所のその後のお話をします。

 10年前、横浜から函館郊外、大沼へ移住した私は、すぐに羊を飼い始めました。

 春、桜が咲くと毛を刈ります。その毛を使おうと始めたのが羊文化研究所です。羊の毛を使って毛糸やセーターや動物の人形などを作っています。年末に作る干支の動物は、羊から始まり、今年の干支、猪まで作りました。

 当初は、大沼にある役場の出張所を使っていました。ある時、友人のKさんから「家に使っていない事務所があるからそこでしませんか」というありがたい申し出があり、その事務所をお借りして続けました。毎回、羊毛を使って小銭入れや眼鏡ケース、帽子、人形などを作りました。多い時には10人くらい集まっておしゃべりしたりしながら作っています。

 羊文化研究所が開かれると、何台もの車がやってきます。

 〈何をしているのだろう〉近所の農家さんたちが様子を窺いに集まってきました。

 「面白そうね。今度、私たちにも教えて。」

 農家の皆さんは、作業も手早く力もあります。私たちが小さな犬や鳥を作っているうちに、ひとまわりもふたまわりも大きなパンダや犬の人形を作っていきます。

 今年の春、我が家の羊の毛刈りの時には、たくさんの仲間達が手伝いに集まりました。スカーティングという刈ったばかりの毛の汚れやごみを取ったりする作業をしてくれました。その毛を洗い、染めてほぐして布団綿のようにします。今年はその綿を紡いで毛糸にしようと思っています。

 時々私は考えます。現在の私の役割とはいったい何なのだろう。

 羊の毛を利用する文化を伝えていくこと。そして、羊の毛でつながった人たちとの輪を広げていくことなのかもしれません。

わたしの今の役割

小川 靖忠 神父

今日の心の糧イメージ

 「適材適所」という言葉があります。環境が整えば、その人に適った役職に就けば、その人の真価がいかんなく発揮されるということでしょうか。

 しかし、それが、十分にかなわないのが現実の環境です。したがって、どこかでわたしたちは不完全燃焼を起してしまうのです。それがストレスとして蓄積されていきます。

 こうした環境の中で、自己の特性をさらに深め、見出していく作業はなかなかです。それでも、「わたし」は何かの、誰かの役に立つために生きているのです。この確信は大切にしたいことです。その役に立つあり方が、優秀かそうでないかは関係がありません。誰がそのような判断をするのでしょうか。大事なことは、生きていることなのです。

 したがって、健康に生きること、さらに、その生き方を楽しんでいることが、誰にとっても、日常的に託されている役割なのではないでしょうか。しかし、仮に病に倒れたとしても、今度はその環境の中で、託されている役割・「生きている」という、今までとは違った別のあり方が見えてきます。

 そして、自分が生きていることが、ある人の励みになったり、喜びになったりします。逆にまた、自分も元気をいただくことがよくあるんじゃないでしょうか。赤ちゃんを見てください。一生懸命息をしています。すやすやと眠っています。ニコニコ笑っています。言葉を交わすこともないのに、ただそれだけで存在感があります。役に立たないから存在価値がないとは誰も思いません。

 そうなんです。ある役職から離れたとしても、命のある限り、人皆に、年相応の、時代に合った役割が託され続けられています。悩み事は無くなりませんが、いつも楽しく前に進みましょう。


前の2件 3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13