ホッとするとき

末盛 千枝子

今日の心の糧イメージ

 いろいろな条件が合わなくて、なかなかミサに行けないこの頃です。

 2010年に東京から岩手に引っ越してきたのですが、盛岡の教会に行くのに、高速道を使っても車で40分はかかります。そして、ミサの時間が日曜日は朝9時だけです。でも、障害のある長男の手当てをしてからでなくては家を出られないのです。引っ越す前には、教会の隣に住んでいました。ですから、ミサに行けないということはほとんどありませんでしたし、買い物の途中でもちょっとお祈りがしたいという時には、買い物カゴを提げて聖堂に寄ったりして、教会の隣に住む幸せを存分に味わっていました。

 そして再婚した夫が住んでいた鎌倉では、一緒にミサに行くことも多くありました。夫婦で並んでミサに与るということがなんと幸せなことだったかと、夫が亡くなった今、あらためて思います。

 今は、息子の体のことを第一に考えるようにしているので、それはそれで仕方がないのだと思うようにしています。でも、例えば、これまた全く別な難しい問題を抱えた、東京に住む次男のことが心配で眠れないような時もあるのです。

 そんな時、長男にミサのことをそれとなく相談すると、日曜の朝の手当ては、やはり遅くなると不安なようです。それよりは、前日の土曜日の夕方のミサに行ってくれた方が、帰りが少し遅くなっても気が楽なようです。それで、先日のこと、思い切って夕方のミサに行きました。本当に久しぶりのことでした。北国の夜道を帰るのは、なかなか気が重いのです。でも、ミサから帰って、本当にホッとしました。

 抱えている問題は具体的には一つも解決したわけではありませんが、それでも心の平安が与えられたと思いました。

ホッとするとき

新井 紀子

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 北海道の函館郊外、大沼に移住して9年目になります。移住してすぐに、私の夢であった羊飼いの生活を始めました。羊飼いにとって一番気を遣うのは出産です。産まれた子供を1頭残らず生かさなければならないのですから。

 秋に種付けをした羊は、5か月後出産ということになります。大体2月から4月までに産まれます。出産が近づくと、私は羊の出産に関する本を読んだり、ビデオを見たりしてその日に備えます。通常は前足の次に頭が出てくるのですが、逆子であったりしたらどうするのか、何度も頭の中で考えておきます。

 その日、お腹の大きな羊が朝から敷き藁を前足で掻いたりしています。巣作りの仕草です。私は敷き藁をいつもより厚めに敷いて、「頑張れ、頑張れ」と羊に声をかけます。やがて前足が見えてきました。「もう少しだよ」次に鼻が見えてきました。次の瞬間、薄い袋を被った子羊がするっと産まれてきました。「よく頑張ったね」、子羊の膜を藁やタオルで拭き取ります。すぐに動きださない時には、子羊の後足を持って逆さに振り、羊水を吐き出させます。母羊は子羊を舐めまわします。子羊はもぞもぞと動き出しました。その時です。2頭目の出産が始まりました。2頭目はするっと産まれてきました。産まれたとたん、頭をぶるっと振っています。そして、すぐに立ち上がろうとします。母羊は大忙しです。2頭の子羊を舐めようとぐるぐると動き回ります。子羊たちは母羊の乳房に吸い付こうと、よろよろと立ち上がります。ぐるぐる、よろよろが続き、子羊がついに母羊の乳房に吸い付きました。

 チュッチュッと音がしています。仔羊にとって一番大事な初乳が飲めた瞬間です。

 私はホッとしたのでした。


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