2019年03月13日の心の糧


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たえず1歩前に

橋本 勲 神父

今日の心の糧イメージ  世にラグビーという名のスポーツがあります。ボールを用いるスポーツのほとんどが大小の差はありますが、丸いボールなのに、このスポーツだけは奇妙な形のボールにこだわります。

 細長い楕円形のボールを巡って、屈強な若者たちが肉弾戦を展開するのです。最近は男性だけではなくたくましい女性たちも始めたようです。

 楕円形のボールですから、必ずしも前へ転がるとは限りません。横へ行くのか、斜めへ走るのか、後へ下がるのか、とにかく地に落ちてみないと分からない。

 しかもその気まぐれボールを手渡すのは、前の人ではなく、後ろの人に限られているのです。

 この気まぐれボールに私たちの人生を重ねて見るのは少し穿ち過ぎになりましょうか。

 私たちもまた考えてみれば、気まぐれな運命に翻弄され、なかなか自分の思い通りには行きません。

 しかし、このスポーツは「なぜと問うなかれ。自分のすべてをぶつけてそのボールをつかみとって走れ」とうながすのです。しかもその途中で1歩前に出て、自分より後に来るものにそのボールを手渡しながら。

 そしてついにゴール。こうしてこのゲームは一段落するのですが、そのゴールの儀式も大地にそのボールをそっと置くだけ。つまり、必死につかんで運んできたボールを何のこだわりもなく手放し、大地に返していくだけのことなのです。

 人間がその運命にもてあそばれた五体を、時が来て、大地にそっと返していくように。

 

 かつて明治大学に北島という名のラグビーの名監督がいました。40年も指導を続け、その精神を一つのことばにまとめました。「前へ」。

 教え子たちは人生のさまざまな場面でこのことばに生きる勇気をもらうのだとか。