わたしの故郷

岡野 絵里子

今日の心の糧イメージ

私は東京で生まれ、東京で育った。だが、故郷は東京なのかと考えると、いくらかの違和感を感じてしまう。東京という都会には、故郷という暖かい言葉がどうも合わないような気がするのである。人々にとって、そこは帰るべき所というより、仕事をする場所だからなのかもしれない。私にとっても、東京は仕事場だと言った方がぴったりする。

私がイメージする故郷とは、豊かな自然に恵まれた土地であり、遠く離れた場所である。自分が充実した生活を楽しんでいる時も、失意に沈んでいる時も、思い浮かべれば、なつかしく、ほろ苦く、やがて胸が温かくなる。そこには愛する人々、すなわち家族や親族、子どもの時の友だちがいて、暖かく迎えてくれる。そしてつらかったことも、嬉しかったことも生き生きと甦ってくる。自分自身の歴史がそこにあるのだ。

故郷とは、自然の懐に帰る所、なつかしい人々の愛情に包まれる所、そして子どもの頃の記憶が眠っていて、思い出せば昔の自分に会える、そんな場所ではないかと思う。

人が生まれるということは、そう驚くようなことではない。国連データからの推計によれば、現在、地球上で1日に誕生する人の数は約20万人だそうだ。だが、その1人1人に、生まれた場所があり、そこが故郷という特別な場所になって、その人を勇気づけ、心を温め続けていくのは、驚くべきことに思われる。

愛され、育てられた記憶が、その土地を特別なものにする。不幸な記憶もまた、その土地を人の心に強く刻みつける。人生の物語に1篇として同じものはない。だが、それらは皆、故郷から第1章が始まっているのである。

わたしの故郷

古川 利雅 神父

今日の心の糧イメージ

故郷、「ふるさと」という言葉、この言葉の「響き」は私たちにとって、何か懐かしいもの、暖かいもの、安らぐものの様に思いますが、皆様どの様に思われるでしょうか? 帰る場所、帰れる場所、帰りたい場所とも言えるかも知れません。

辞書を紐解いてみると、いろいろな意味が出てきます。

生まれ育った土地、郷里、精神的な寄りどころ、かつて住んだり訪れたことのある土地、自宅、我が家...などなど。そうすると故郷「ふるさと」は、一つであっても良いし、一つでなくても良いということになりますね。自分にとっては、まず何よりも今も母や姉の住んでいる、私が育った実家になるでしょうか。

また幼稚園や小学校、大学、社会人時代に通ったお茶の先生の家、何度も通った巡礼地など、私にとっての沢山の故郷が心に浮かびました。特に小学校は、40年以上前、私が卒業した時におられた幾人かの先生方が今もおられ、お伺いする毎に、お会いする度に、昔のことが懐かしく思い出され、童心に返り心が洗われる思いがします。皆様の故郷はどうでしょう。

1人1人想う故郷は異なると思いますが、それぞれに思い出されたのではないでしょうか。故郷に想いを巡らすことで、また故郷を訪れることによって、故郷で過ごすことによって、自分の中で何か変わっていく様に、何かが変えられていく様に思います。何も感じることはなかったしても、きっと。

ご自分にとっての拠り所、原点、故郷、どうかこれからもそれぞれ大切にしてゆきましょう。私たちの人生の歩みの中で、それは自分を受け止めてくれる大きな場となるでしょうから。そしてその中で、新たにされ、新たに進む力をいただいて歩んでゆくことができます様に。


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