故郷とは、自然の懐に帰る所、なつかしい人々の愛情に包まれる所、そして子どもの頃の記憶が眠っていて、思い出せば昔の自分に会える、そんな場所ではないかと思う。
人が生まれるということは、そう驚くようなことではない。国連データからの推計によれば、現在、地球上で1日に誕生する人の数は約20万人だそうだ。だが、その1人1人に、生まれた場所があり、そこが故郷という特別な場所になって、その人を勇気づけ、心を温め続けていくのは、驚くべきことに思われる。
愛され、育てられた記憶が、その土地を特別なものにする。不幸な記憶もまた、その土地を人の心に強く刻みつける。人生の物語に1篇として同じものはない。だが、それらは皆、故郷から第1章が始まっているのである。
また幼稚園や小学校、大学、社会人時代に通ったお茶の先生の家、何度も通った巡礼地など、私にとっての沢山の故郷が心に浮かびました。特に小学校は、40年以上前、私が卒業した時におられた幾人かの先生方が今もおられ、お伺いする毎に、お会いする度に、昔のことが懐かしく思い出され、童心に返り心が洗われる思いがします。皆様の故郷はどうでしょう。
1人1人想う故郷は異なると思いますが、それぞれに思い出されたのではないでしょうか。故郷に想いを巡らすことで、また故郷を訪れることによって、故郷で過ごすことによって、自分の中で何か変わっていく様に、何かが変えられていく様に思います。何も感じることはなかったしても、きっと。
ご自分にとっての拠り所、原点、故郷、どうかこれからもそれぞれ大切にしてゆきましょう。私たちの人生の歩みの中で、それは自分を受け止めてくれる大きな場となるでしょうから。そしてその中で、新たにされ、新たに進む力をいただいて歩んでゆくことができます様に。