しばらくすると、「おやつにしようよ」と声がかかりました。でもばあさまは庫裡のなかには入りません。
おやつはどこかな?と思っていると、ばあさまがおイモの葉っぱを三角形にまるめ、そこにクワの実を摘んでは盛って、「あんたもお食べよ」と、1粒ずつ口にいれています。わたしもさっそくばあさまの真似をして葉っぱのお皿にクワの実を盛りました。
「いただきます」
ちょっとブルーベリーみたいに甘酸っぱくて美味しい!
「ねー、わたしたちのいのちを生かしてくださるのだから、いただきます、ってすてきなご挨拶」ぽつりとひとこと。
あそこのお寺にさとりをひらいたばあさまがいる。そんなうわさが広まって、いろんな人が会いにくるようです。
でもみたところ、ごく普通のばあさまなのですけれど。
さて、クワの実のおやつをいただき、草むしりも一段落すると、ばあさまから思いがけないことをいわれました。
「あんたといるとたのしいよ。こんやは泊まっていきなさい」
え?私なんにもばあさまをたのしませるようなことしてないのに。
ふしぎな引力にひかれるように、ばあさまと一夜をともにしたのです。といっても、「さあ寝ましょ」といって、ばあさまは敷きふとんをくるくるまるめて、そのなかにすっぽりくるまって寝てしまい、わたしもしかたなくそのお隣でミノ虫状態。
ばあさまはなんと野性の子!
この季節に母が上京し、私の小さな家に泊まった。朝、グレゴリオが「ホーホケキョ」と鳴いた。母が「あら、うぐいすが鳴いている」と言ったので、窓を開け、母と一緒に梅の木に止まっているうぐいすを見た。私は「グレゴリオ~」と呼んだ。すると窓すれすれに翼を広げて飛んできて、梅の木に戻った。母は「あのうぐいすはあなたのことがわかるのね」と言った。また「グレゴリオ~」と呼ぶと、またブーメランのように飛んできて、梅の木に戻った。
グレゴリオは、土手の後ろの古い建物が取り壊され、新しいマンションが建つことになり、解体工事が始まると来なくなった。しかし、母と二人で見たグレゴリオとの出来事は、神さまが造ってくださった植物や鳥を純粋に愛でたときに現れる、マリアさまの心だったのかも知れない。
「マリアさまの こころ それは うぐいす」という歌があるように。