新たな一歩

阿南 孝也

今日の心の糧イメージ

水泳が苦手だった私は、水が怖くてプールに顔をつけることすらできませんでした。あれは小学校3年の夏のことでした。プールで泳ぐ同級生の隣で、泳げない私は、顔に水がかからないようにそっと水中を歩いていました。その時でした。つるんと滑って全身水中に浸かってしまったのです。ずぶずぶと沈み、その直後、ふわっと体が浮くのを感じました。このアクシデントのおかげで、その夏の間に、バタ足、クロールと、順に泳げるようになりました。体の力を抜いて水に全身を託す、たったそれだけでよいのです。自分の力で浮こうと力むと、かえって沈んでしまうことがわかりました。聖書に、水の上を歩くペトロの話が記されています。(参:マタイ14・29~32)

=イエスが「来なさい」と言われたので、ペトロは舟から降りて水の上を歩き、イエスの方へ進んだ。しかし、強い風に気がついて怖くなり、沈みかけたので、「主よ、助けてください」と叫んだ。イエスはすぐに手を伸ばして捕まえ、「信仰の薄い者よ、なぜ疑ったのか」と言われた。そして、2人が舟に乗り込むと、風は静まった。=

イエス様が共にいて下されば何だってできる、この奇跡物語は、そう教えてくれています。しかし、イエス様から目をそらし身の周りの困難に心が奪われたとき、ペトロは沈みそうになりました。でもそんなペトロに対して、イエス様は優しく手を差し伸べて助けて下さり、励まして下さったのです。

 

私たちは、人生という大海原を進んでいかなければなりません。「来なさい」と呼びかけてくださるイエス様の声に、耳を傾けることができますように。そして嵐におびえ溺れそうになっても、必ず助けてくださるイエス様に身をゆだねて歩んでいきたい、そう願っています。

新たな一歩

湯川 千恵子

今日の心の糧イメージ

人生にはその歳になって始めて気づき、納得出来る事が多い。

妻として、4人の子どもの母、主婦として生きてきた私は、56歳の時、夫を天に見送った後、どう生きていいか分からず途方に暮れた。

アメリカ留学中の娘夫婦に招かれて渡米し、そこで60歳になった私は「還暦」という人生暦の素晴らしさに始めて気づいたのである。

「還暦」とは60年で自分が生まれた年の干支に還ることで、数え年61歳のこと。これを機に人生を再出発して新しいことを学ぶのだ。

「そうだ!私も「還暦」で0歳の赤ちゃんに戻り、夢だった英語の勉強をここで始めようかな?」そう思ったら急に元気が出た。子どもたちも賛成してくれて少し突飛な「おばあちゃんの語学留学」が実現した。

娘宅に下宿して英語の勉強が始まった。1年後、娘夫婦が帰国する時、私は迷った。もし、一緒に帰国したら、私は70歳になった時、きっと後悔するだろう・・・。しかし病気にでもなったら・・・と不安がつきまとう。そんな中、夫の友人ご夫妻が近所に越して来たことを知り心丈夫になった。天国の夫が後押してくれた気がした。そこで私はアメリカに一人残り、「還暦の暦」で2歳の時、大学に入学。先生や学友に助けられて卒業し、更に大学院に進んで老年福祉を学び、認知症ケアの実習も逐えて帰国した。

 

そして7年半の留学の日々を書き綴って本を出版、73歳からは留学体験談をあちこちで話し、充実した毎日だった。

80代になった今、「還暦」の考え方は「東洋の智恵」だとつくづく想う。「人生は60から」と新たな一歩を踏み出す勇気が与えられ、新しいことを学ぶ楽しさを体験できるからである。


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