ゆるし・いやし

湯川 千恵子

今日の心の糧イメージ

イノシシ年生まれの私はよく夫に言われた。「猪突猛進する君はやっぱりイノシシだよ!」

好奇心が強く、物事を感覚的に受け止めて、とにかくやってみる、そんな私はそそっかしくて、夫や子どもたちに迷惑をかけた。しかしあまり気にしないまま、前向きに、新しいことにチャレンジしてきたように想う。

結婚して長女の幼稚園でキリストの愛の教えに触れて僅か3ヶ月後、夫と一家で洗礼を受けた時も「まだよく分からないけれど、この道の先に輝くのは真理の光だ!」と直感して決心したのだった。

 

4人の子を持つ未熟な母の私は、キリストの愛の言葉を支えに、信仰の先輩達に助けられて子育てをした。それがほぼ終った頃、夫を癌で失い、これからどう生きていいか途方にくれた。

そして『赤ちゃんに還って新しいことを学ぶ』という「還暦」」の考え方に誘発されてアメリカ留学を思い立ち、英語を初歩から学び、大学生となり、大学院に進み、ソーシャルワーク修士号を取得して7年半ぶりに帰国した.その間、どれだけ多くの方に助けられ、お世話になったかしれない。

 

傘寿の坂を越えて気持ちは以前と変わらないが、やはり体が追いつかず、過ぎ来し方を振り返るにつけ、夫や子どもたち、また周りの人たちに自分の気持ちを押しつけていたことに気づいて、反省しきりである。そしてそんな私を受け入れて赦し、支えてくれていたみんなの愛情をひしひしと感じて感謝の念で一杯になるのだ。

そして全ての向こうで、そんな私を愛し、赦し、万事をよい方へと導いて下さる神の慈しみを感謝せずにはいられない。

その大いなる愛に応えて、私も相手のためだけを思う「本当の愛」を少しでも伝えたいと、神の助けを願うのである。

ゆるし・いやし

松浦 信行 神父

今日の心の糧イメージ

私は、小さい頃とても我が儘で、癇癪持ちでした。特に弟に対しては、何か失敗したり、私のものをいじられると大声を上げて咎めたものです。少し大きくなると、私の中でもこのままでは駄目だ、大人になれないという気持ちを持つようになりました。

あれは私が20歳になろうとする夏休みのことでした。

私は、学校でマンドリンクラブに入ってフルートのパートを受け持っていました。たまたま、中学の時に買ってもらったフルートを持っていたからです。しかしそれが壊れかけていました。すると母が、「お前の20歳になるプレゼントとして新しいものを買ってあげるよ。」と楽器屋に私を連れて行き、余裕がなかったために月賦でフルートを買ってくれました。

その夏、私は度々フルートの練習をしていました。そんな時、2歳下の弟が「兄ちゃん、そのフルート吹かせてよ」と言って、私のフルートを取り上げようとしました。ところが私の方は大事なフルートだから弟に触られたら壊れてしまうと手を放しませんでした。その時、振り回したフルートから足部管が飛び出してしまい、抜け飛んだ足部管は壁にあたって、大きく窪んでしまいました。

私は大声で怒鳴ろうと思ったところ、不思議なことに、別の行動をしていました。弟が謝る中「いいよ、中から丸い棒で突いて直すから」と、平然としている私がいたのです。

私自身が、その行動にびっくりしていました。短気だ、我が儘だと思っていた自分が、弟をゆるせる大きな自分に変わっていたのです。

この思い出は、欠点のある自分が、思いがけないことで変わる可能性があることのしるしとして、それ以来私の大切な宝物となりました。


前の2件 3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13