私たちのお母さん

松浦 信行 神父

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「あんな、この前、おもろい話が、うちであったで」、そう、その信者のおばさんは語り始めました。小学生の息子さんが友達の家で夕食をご馳走になって、帰ってきた時の話なのです。「うちの息子が、『母さん大変やで。友達のうち、カレーライスに肉が入ってんのや。珍しいで。よーもあんな肉、カレーライスに入れよって、俺びっくりしたわ。』と言いよるんや」

そして、「わたしのほうが慌ててしもて、『あんな、変わってるのはうちの方や、普通は肉を入れるんや。うちみたいなシーフードカレーの方が珍しいんやで。』と、息子に説明するのに一苦労やったわ。」

でも、息子さんの方は納得がいかず、しばらくの間「うちのシーフードカレーの方が美味しいのに、なんで肉を使うんや」と言い続けたそうです。食は本当に力強く、人に影響するのですね。

このおばさんは、私が赴任した教会で、いつもお母さんのような役割を果たしていました。彼女はいつも教会にいて、留守番をし、神父や信者さんがお腹を空かしていると、出来合いのものを食べさせてくれるのです。また神父が忙しくて動けない時などは、色々な悩みを持った人に接して話を聞いてくれました。また、人から頼まれるとよく病者訪問をしてくれました。

当時、私たち神父は、共同宣教司牧という形で、5つの教会を3人で受け持っていました。また1つの教会で共同生活をしていたので、後の4つは、司祭は常駐していませんでした。だから彼女のいる教会は、彼女のところに情報が集まり、彼女の人柄で多くの人が何時も屯していました。

食を介しての影響と同じように、彼女は教会にわたしたちのお母さんの味をもたらしてくれたのです。

私たちのお母さん

土屋 至

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中学生と聖母マリアについて聖書を読む授業で、最初にビートルズの「レットイットビー」を聞く。この歌は今の中学生にもよく知られている。

これを聞いたあとに「この歌は聖母マリアの歌だよ」というと生徒たちは驚く。そこでこの歌の歌詞と、聖書のマリアへの受胎告知の場面の日本語と英語をかいたプリントを配って説明する。

「『レットイットビー』の英語の歌詞を見てご覧。

私が悩んで落ち込んでいたときに、聖母マリアが私のところに来て、知恵の言葉『レットイットビー』と語りかけるとあるだろう。この知恵の言葉って、ビートルズの歌の中では『成り行きにまかせなさい』とか『なるようになるさ』とかいう意味で使われている。実は聖書のマリアの言葉では、意味は違っているんだ。ではほんとうはどういう意味なのか、その場面を日本語で読んで見よう」

「マリアは天使ガブリエルから、子どもが生まれると告げられる。マリアは『まだ結婚もしていないのにそんなことがありえない』ととまどうが、天使から説明されて、最後は母となることを受け入れる。その受け入れるときの言葉に『レットイットビー』が含まれていそうだね。その言葉は何だろう?」

「私は主のはしためです。お言葉どおりになりますように」

「でもそれって『成り行きにまかせなさい』という意味と違うよね。その場面の英語のところを読んでみよう。

Let it be to me according to your words.

ほらここに『レットイットビー』があった。ビートルズは『お言葉どおりにこの身に』というところを省いちゃったから『なるようになるさ』っていう意味になっちゃったんだ。本当は、お言葉どおりになりますようにという意味なんだ。それが本当の知恵の言葉というわけさ」


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