わたしの順番になると正直に「倒れかかって危険というなら切るのがいいし、自然はなるべく大事にしたいのでもうしばらく切るのを見合わせるというなら残せばいい」などといったようにおもいます。優柔不断?でもほんとうにこうでなくてはダメという考えにならなかったのです。そのあとで「みんなが、それぞれどちらがいいか決めたのに、どちらでもいいといったのはアナタだけ」と、ヒンシュクをかってしまいました。
苦しみに苦しみ、祈りに祈ったすえに英雄的な捨て身の決断をした人がいます。
列福された偉大なキリシタン大名、ユスト高山右近が出会った、大きな試練です。
高槻城主として織田信長と主君荒木村重とのあいだでジレンマに苦しんだ右近は、ついに城を明け渡せとせまる信長に逆らわず・・しかし城を明け渡せば多くのキリシタンを犠牲にしますから・・・城を明け渡さずにすむ道をとりました。右近は城の指揮を父に返し、頭をまるめて刀を捨て、ひとり信長に身を投じたのです。世捨て人として。
試練は終わりました。
この決断は、ゆるぎない信仰とキリシタンを救おうとの、右近の生涯をつらぬく姿勢ですね。
近況報告をと言われて最初に話したのは、千葉郊外へ移住しトマト農家になった人でした。「私が作るトマトはおいしいのよ。味の良さだけは誰にも負けないわ。皆さん、ぜひ食べに来てください。」次に登場したのは、建築設計士となった方で、住宅のリフォームをしていることを話されました。
いよいよ、私の番がきました。
「子供の頃から憧れていた『アルプスの少女ハイジ』の生活をしたいと思い、7年前、北海道へ移住しました。そこで羊5頭を飼って暮らしています。今日かぶってきた帽子も、ベストも、我が家の羊の毛で作りました。」そんな話をすると、「楽しそうだね」「すごく若返ったよ。北海道のどのへんで暮らしているの?」「帽子はどうやって作ったの?」と矢継ぎ早に質問されてしまいました。
横浜に数日滞在し、用事を済ませて北海道大沼にある自宅に帰りました。紅葉が一段と進んでいました。
〈なんて美しいのでしょう。〉
自分らしく生きるとはどういうことなのでしょう。それには場所と役割が必要です。私にとってその場所は北海道大沼でした。その役割は羊を飼って暮らすことだったと思います。
「ただいま!」森の木々よ。
「ただいま!」羊たちよ。