この時間は短いほうがいいのです。できれば一瞬。その瞬間に素早く英雄的に戦い、勝ちを収めれば、意志はますます強くなります。多少の困難にもめげず、自分の目標を達成できる人になっていけます。
たとえば、「朝の英雄的瞬間」では、朝、目がさめたら、すぐに寝床から起き上がることが目標です。ぐずぐずせず、パッと行動することによって、この戦いに勝つことができます。
実際、これはなかなか難しいことです。ふとんの暖かさが恋しい真冬でも、肉体が疲労困ぱいする日でも、続けるのです。
もし寝坊をすれば、気分はすぐれず、慌ただしく朝の支度をしてその結果、学校や職場に遅れてしまうこともあるでしょう。朝食もきちんと取れないこともあり、その後の授業や仕事でも活力が出てきません。
逆に、毎朝、決めた時刻に起床し、最初の瞬間から自己に打ち克てれば、その日の計画もスムーズにいくでしょう。
このように、1日の始めは、その日のあり方を大きく左右します。他にも「勉強の前の英雄的瞬間」など各場面で自分に打ち克つべき瞬間はありますが、1日の始めは特に大事だと思います。
「朝の英雄的瞬間」に打ち克ち、ひざまずいて短い祈りをささげる。すると、神様に助けられ、今日もがんばろう、という活力が湧いてきます。
毎日、気持ち良く、1日を始めたいものですね。
わたしは昔、旧制中学生のとき、陸上競技部に入部していました。走りが早かったわけではなく、他に適当な部がなかったからです。
さて、陸上競技では、スタートダッシュが大切です。マラソンの時もそうですが、スタートに遅れると、それを取り返そうといくら頑張っても、他の選手も全力で走っているわけですから、先頭集団に追いつくことはほとんど不可能です。ですから、スタートを早くすることが肝腎なのです。先頭集団の中に入って走っていると、長距離の場合、途中で体力が落ちて遅れるようになることがありますが、トップを走っているランナーが視界に入っているので、余力が残っていれば、ラストスパートをかけることができます。
人生もマラソンのようなものではないでしょうか。だから、始めが肝腎と思って、善く生きるように努めるべきでしょう。
5歳ぐらいまでの子どもの養育や教育が極めて大切です。体も心も魂も健やかに育てれば、後は何も心配いらないでしょう。始めが肝腎で、小さいときに美しいものに出会わせるとか、良い本を読んで聞かせるとか、素晴らしい音楽を聴かせるとか、美味しい物を食べさせるとか、聖なる教会堂で座らせるとか、などの体験は、その子を素晴らしい大人にするでしょう。