第110課　ペトロの否認（マタイ 26・69～75）

　イエズス様がゲッセマネの園で逮捕されて大祭司カヤファの家へ連れて行かれた時、イエズス様の弟子たちは皆逃げてしまいましたが、ペトロはカヤファの家で行なわれる裁判の成り行きを見届けるために、イエズス様の後について行きました。

　ペトロがカヤファの家の中庭に座っていた時、一人の下女が近寄って来て、「あなたもガリラヤ人のイエズスといっしょにいましたね」と言いました。するとペトロは「何を言っているのか、わたしにはわからない」と答えました。

　それからしばらくして、もう一人の下女がペトロを指して人々に「この人はナザレ人のイエズスといっしょにいました」と言いましたが、ペトロは「そんな人は知らない」と再び否定しました。

　最後にある人々がペトロに近寄って、「確かにおまえも彼らの仲間だ」と言いました。しかしペトロは誓って、「そんな人は知らない」と答えました。

　ちょうどその時、鶏が鳴きました。ペトロはイエズス様が最後の晩さんの後で、「鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言うであろう」とおっしゃったのを思い出して、外に出て激しく泣きました。

　イエズス様が逮捕された時、二人の弟子がイエズス様を裏切りました。イスカリオテのユダはお金と引き換えにイエズス様を敵に渡し、ペトロは三回イエズス様を拒みました。二人ともイエズス様に対して大きな罪を犯しました。しかし、二人のその後の行動には大きな違いがありました。イエズス様が死の宣告を受けられたことを知ったユダは絶望して自殺しました。しかしペトロはイエズス様のおん憐みを信頼して、心から自分の罪を悔い改めて、すばらしい聖人になりました。

　この二人の行動には大事な教訓が秘められています。もし罪を犯すようなことがあってもユダのように絶望すると救われませんが、ペトロのように悔い改めてイエズス様の御助けを願うならば私たちも聖人になることができるのです。

（つづく）