第52課 罪深い女(ルカ 7・36~50)

 ある時、一人のファリサイ派の人がイエズス様を自分の家へ招待しました。当時のイスラエルでは人を自分の家ヘ招いた時には、足を洗うための水を出し、その人の頬にせっぷんし、そして来客の髪の毛に油を塗る習慣がありましたが、そのファリサイ派の人はそのような礼儀を全部怠りました。

 ところが食事の時に、評判の悪い女の人が食堂に入って来て、泣きながらイエズス様の足もとにひれ伏しました。彼女は涙でイエズス様の足をぬらして、自分の髪の毛で足を拭き、そして、その足にせっぷんして香油を塗りました。

 イエズス様が預言者であるならば、そのような罪深い人がご自分に触れることを許すはずがないとファリサイ派の人が考えていた時、イエズス様は次のようなたとえ話をなさいました。

 「ある金貸しから金を借りた人が二人いた。一人は500デナリ、もう一人は50デナリを借りていた。ところが、二人とも返す金がなかったので、貸し主は二人ともゆるしてやった。この二人のうち、どちらがその人を多く愛するだろうか」とイエズス様はお聞きになったのです。

 ファリサイ派の人は「多くゆるしてもらった者だと思います」と答えました。イエズス様は「その判断は正しい」とおっしゃって、女の人の方へ振り向かれ、「この女をごらん。わたしがあなたの家に入って来ても、あなたは足を洗う水さえくれなかったが、彼女は涙でわたしの足をぬらし、自分の髪の毛でふいてくれた。あなたは、わたしにせっぷんをしなかったが、彼女は、わたしが入って来たときから、わたしの足にせっぷんをしてやまなかった。あなたはわたしの頭に油を塗ってくれなかったが、この女はわたしの足に香油を塗ってくれた」とおっしゃいました。そして続いて、「彼女は多く愛したから多くの罪がゆるされ、又、多くの罪がゆるされたから、彼女は益々多く愛するようになる」と説明なさいました。

(つづく)