第41課 汝、殺すなかれ(マタイ 5・17、21、43、44)

 イスラエル人にとってイエズス様のみ教えは全く新しい教えのように聞こえました。旧約聖書の預言者たちの教えが神様からのものと認め、その通り生活することによって救われると信じていた彼らは、イエズス様が預言者たちと違うことを教えていると思って驚きました。

 そのことがおわかりになったイエズス様は誤解されないために、ご自分のみ教えは預言者たちの教えと違うものではなく、預言者たちの教えを完成させるものであると説明なさいました。「あなたがたは、わたしが律法や預言者の教えを廃止するために来たと思ってはならない。廃止するためではなく、成就するために来たのである」とおっしゃったのです。

 それから一つの例として、イエズス様は、モーセが神様から与えられた十戒の中の5番目の戒め「汝、殺すなかれ」についてお話しになりました。「あなたがたも聞いているとおり、昔の人々は、『殺してはいけない、人を殺した者は裁きを受ける』と命じられていた。しかし、わたしはあなたがたに言う。兄弟に対して怒る者は皆裁きを受ける」とおっしゃいました。つまり、十戒の5番目の戒めでは、人を殺すことだけでなく、人を憎むことも禁じられているのであるとイエズス様はお教えになりました。要するに、この戒めを完全に守るためには、すべての人々を愛さなければならないと教えられたのです。

 そして、その意味を強調するために言葉をつけ加えて「『隣人を愛し、敵を憎め』と命じられたのを、あなたがたは聞いている。しかし、わたしはあなたがたに言う。敵を愛し、あなたがたを迫害する者のために祈りなさい」とイエズス様はおっしゃったのです。

(つづく)