大切な存在

Smile of the Sun - 太陽のほほえみイメージ

 信夫は去年の春大学を卒業し、ある大きなデパートの事務所に勤めるようになった。いい成績で卒業したものにありがちのおごりは彼にはなく、いつも謙虚であった。彼は実際的なデパートの事務については何も知らなかったが、彼は何でも知るための努力をした。自分の知らない事があるのを自ら認めることのできる彼は、幸運というのか、神の恵みを受けているとでも言えるだろう。
 信夫は仕事について学ぶだけではなく、彼は店の伝統や習慣、そして方針を学ぶことを、更にすすめて、上役や同僚の性格をも知る事に努力を払っていたのである。
 一緒に仕事をする人々のよい性質を正しく評価しようとした彼は、間もなく他の人のよい点ばかりでなく、欠点にも気付くようになった。野心、嫉妬、憎しみ、傲慢など・・・。しかしこんな欠点をみても、彼の同僚や上役に対するいい点への尊敬は変らなかった。というのは彼自身にもいろいろの欠点がある事を知っていたからである。
 信夫はたとえ反対する人があったとしても、自分の仕事についての意見を述べる事を少しも恐れず、迷いもしなかった。決して出しゃばった態度ではなく。
 しかも彼は自分が給料をとっている事を心におき、誠実であること、信頼でき、また協力的であることを肝に命じているのである。彼はもう職場で大切な存在の一人である。彼の将来は約束されたと言えるだろう。