これ以上の偉大な愛はない

Smile of the Sun - 太陽のほほえみイメージ

 松山さんは、日本のある大きな大学の教授で、彼は学生たちに大変人気があった。学生は皆、初めて教授に会った時から、第二次世界大戦で得た教授の経験談によって、自分の選んだ職業に対するこの教授の献身ぶりに心を打たれていた。
 戦争中、松山教授は、少尉として駆逐艦に乗り組んでいた最初の航海の途中で、その駆逐艦が魚雷を受け、すぐに沈んでしまった。船が転覆した時、松山さんは海の中へ投げ出された。少し離れた所に漂っている板を見つけて彼は、全力をあげて泳いで行った。しかし板に近づいた時、もう一人の男が板に向かって泳いで来るのが見えた。それは上官であった。
 板は、二人がつかまるには小さすぎと思った松山さんは、板を上官の方へ押し、反対側へ向かって泳ぎ始めた。しかし上官は彼を掴まえ、「君は私より若い」と言った。「奥さんや子供のためにも、また、仕事の上でも、君にはすることがまだたくさんある。命を粗末にしてはいけない」。こういうと上官は、松山さんを板につかまらせて、自分はすばやく離れて行った。
 話の終りになると、松山教授はいつも、命を救ってくれた上官の英雄的行為と、自己犠牲の精神をほめたたえた。
 教授が、助けられた命を最も意義あるように使おうとしていることを、学生たちはいつもはっきり知っていたのである。