2017年07月14日の心の糧


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先取りする

橋本 勲 神父

今日の心の糧イメージ 世に「釣りバカ」と言われる人たちがいます。釣りが何より好きな方々です。

かつて知り合いに日曜日になると何はさておき釣りに出かける人がいました。家を出て民家があるところでは我慢しているけれど、だれもいないところに来ると、自然に足が速くなって一刻も早く釣り場にたどり着きたいと気が焦るのだそうです。釣りバカの皆さんのみならず、誰もが一刻も早くたどり着きたい、何かを先取りしたいと焦っているとしか思えないことがあります。

誰に聞いても一様に言います。「ますます時のたつのが早くなった」と。

かつて子供の頃夏休みと言えばずいぶんと長かったものです。

それが20代の頃からでしょうか、次第に時の流れが速くなり始めます。30代、40代、光陰は矢の如く、50代60代といよいよ速度を上げ、70代の今、ロケットか弾丸列車です。

そんなに急いでどこへ行こうとしているのでしょうか。

人はできるだけ長生きしたいと望んでいるようです。しかしそれは本音の希望なのでしょうか。

もしかしたら、人間は根っこのところでは一刻も早くたどり着きたいところがあるのではないでしょうか。

死にたいとは望まないにしても、本当の望み、つまり本望のレベルでは、釣りバカの方々と同様、自然に足早やとなる、そんな魅力的な行き先があることを掴んでいる。

そう考えると、このますます速まる時間の説明がつくように思うのですが、いかがでしょうか。

釣り人は釣り糸を海の底に垂らし、指先に全神経を集中して、海底の気配を伺います。ここでやっと落ち着くという。

1きっと私たち人間も人生の海に釣り糸を垂れて、本望の世界を伺おうとしているのです。そこでやっと落ち着くような世界を。