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いただく命

村田 佳代子

今日の心の糧イメージ

メーテルリンクの「青い鳥」は、誰もが幼い頃一度は読んだことのある有名な童話です。

チルチル、ミチルの兄弟が隣に住む病気の少女のために青い鳥を捜しに行くというお話ですが、犬や猫を始め、色々な妖精と共に不思議な国々を旅していきます。私も幼稚園に通っていた頃に母に読み聞かせて貰いました。絵が可愛くて大好きな絵本の一冊でしたが、二人が捜した青い鳥は身近にいた事に気付くという話だと単純に理解していました。ところが、成長し、改めて文学全集の中で読み直してみたら、とんでもなく哲学的な物語ではありませんか。

思春期の私は、この物語から沢山の教訓を得ました。

ことに「未来の国」の話で、これから生まれようとする多くの命が、それぞれ袋を抱えて生まれる順番を待っている場面から、人は誕生の時に運命が入った袋を神様から頂くのだと理解し、納得しました。袋の中身は、能力、病気、出会い、別れ、など人生の様々な要素がぎっしりと詰まっているのです。神様が、個性豊かな人生を小さな命に託してこの世に送り出して下さったので、私たちは日々感謝して、袋の中身を大切に受け入れて精一杯生きなければと覚悟を決めました。

大学生の時、発達心理学のクラスで此の事を話しましたら、教授から「現実はその袋の可能性の半分も使わない人が多いのです。そして自分の袋を放り出して他人の袋に手を出したり、生命そのものに勝手な操作をするまでになった人間、正しい発達の意味を検証しましょう」と言われたことが忘れられません。それ以来、命は神様からいただいたもの、袋は、誰のものでもない私の袋である以上、すっかり中身が無くなるまで大切にして生きようと決め、今日まで歩んできました。