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いただく命

堀 妙子

今日の心の糧イメージ

ある司祭が、「自分のもっているカードでしか戦えない」と話してくれたことがある。

ページワンなどのトランプのゲームをしているときに、勝ち目のないカードばかりだったときに、どうしたらいいのだろう? このゲームは負けるに決まっていると思うことがある。しかし、それでも最後まであきらめないように静かに状況を見守っていると、有利なカードをもっている人が、浮き足立って勝ち急いでいるときに、ふいにモーセが出エジプト記で海の水が左右に分かれるように、道ができて勝ってしまうことがある。

神さまからいただく命のカード、それは神さまの自由な発露によって配られる。「えっ、神さま、私にくださったカードはこれですか」と聞き返したくなるときもある。今の世の中は、「主の祈り」にある「み国がきますように」という願いで世界情勢が動いているわけではない。人類の歴史上、かつてないような状況に向かって世界は動いている。世界の上層部は、自分のカードが最強だと思って戦っているようだが、その結末は地道にみ国を築いていこうとしているカードを引いた者に風向きが変わり、勝利に導かれることもあるのだ。

イエスがこの世で引いたカードはもっとも弱いものだった。十字架刑のカードを引いてしまったのだ。しかし、私は今、この最悪に見えるカードこそが、人びとに救いをもたらす最強のカードでもあると思うようになった。十字架についたイエスの姿を見ていると、この人こそ、小さな一つひとつのことを愛の道に導くお方なのだと信じる。自分がいただいたカード、自分がいただいた命をつぶやかず、次の世代のために、一つひとつできることを大切にして使っていきたいと思う。