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友好

湯川 千恵子

今日の心の糧イメージ

以前、夫の仕事の関係で11歳の長女を頭に9歳、5歳、2歳の男児を連れて一家でアメリカのデンバーの町で暮らした時のこと。

子どもが多い我が家には近所の子たちが遊びに来て、三輪車につけたワゴンという箱車に交代で乗り、芝生の庭を駆け回っていました。

誰かが「ゲットオン・ザ・ワゴン・ヒロシ!」と言うと、5歳の次男の宏が飛び乗って一回り、宏が「おりて!」と叫ぶと、乗っていた子がぴょんと飛び降りるなど、遊びの中で子どもたちは日本語も英語も意識になく、自然に通じ合っているのです。

「子どもって凄い!」と感心していました。

ところがある日、スカイラと言う子と宏が玩具を取り合って、あわや取っ組み合い!とハラハラした矢先、側にいたスカイラのママが息子を抱き寄せてゆっくりと言いました。

「スカイラ、あなたももうすぐパパの仕事で南米のコロンビアに行くのでしょう?そこでお友達と仲良くして欲しかったら、今、宏と仲良くしてあげるのよ。」すると、きかん坊のスカイラが案外素直に納得して玩具を宏に譲ったのです。私はほっとすると同時に、スカイラのママの言葉から人間として最も大切な心を教えられた気がしました。

自分だけ良ければ・・・というのは幼児だけではありません。いくつになっても、「我が身が一番大切」というのは人間本来の姿でしょう。

だからこそ、「自分が大切なら相手も同じように自分が大切」、だから「自分にされて厭なことは人にしてはいけない」ということ。更にスカイラのママが言ったように「自分にして欲しいことを人にしてあげる」優しい気持ちをしっかり心に刻んでおくことは、家庭でも、社会でも、また国際間でも互いに仲良く平和に生きて行く上で最も大切な心構えだと思うからです。