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老いてなお・・・

シスター 渡辺 和子

今日の心の糧イメージ

「老いてなお・・・」という言葉には、その次に、ほめ言葉が来てもいいし、皮肉めいた言葉でも構わない、どちらにも使える文言です。

講演をお頼まれして行くと、出迎えの人が、「お一人で、お伴もなしでいらしたのですか」と、感心したように仰ることもあります。

そうかと思うと、せっかくのお料理と思って、努力していただいた私に、「シスターは、お歳に似合わず健啖家ですね」と言われて、無理せずに、残せばよかったと後悔することもあります。

いずれにしても、歳を取ると、どことなくひがみっぽくなっている自分に気づいて、気をつけなくてはいけないと、自分に言いきかせている今日この頃です。

60代、70代の時も、いろいろ病気をしましたが、あまり歳を感じずにいました。それが80代に入って、急に自分の老いを身にしみて感じるようになりました。そして、しみじみ、この歳になっても、なお仕事をさせてもらえる体に産み、育ててくれた父母に感謝しています。

今、いただいている仕事が、いつまで出来るかわかりません。若い時には、他人のために出来ていたことが、今は、していただく立場になっていること、30分で出来ていたことが1時間かかるなど、自分のふがいなさを感じています。89年も働いてくれた目、耳その他の痛んだ部品に、「今までありがとう」と言いこそすれ、責めない自分でありたいと、しみじみ思います。

老いてなお出来ること、それは、ふがいない自分を、あるがままに受け入れ、機嫌よく感謝を忘れずに生きること。忙しかった頃、おろそかにしがちだった神との交わりを深めてゆくことでありたいと願っています。