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2人3脚

土屋 至

今日の心の糧イメージ

浜田広介作の童話「泣いた赤鬼」は多くの人に愛された話ではないかと思います。少年時代のわたしもこのお話しが大好きでした。自分で絵を描いて紙芝居を作って何度も演じたくらいです。高校の英語の選択の時間には英語で紙芝居をしました。

この話は、ある村に引っ越してきた赤鬼と青鬼のはなしです。でも鬼たちは怖がられてなかなか村の人たちと友だちになれないのです。そこである芝居をすることにしました。青鬼が村の人をいじめているところに赤鬼が現れて、その青鬼をやっつけて村の人を救うという演技をすることにしたのです。その演技は見事にうまくいって、赤鬼は村の人と親しくなることができました。でも、青鬼はその村に住めなくなり、村を出て行ってしまいます。その青鬼の置き手紙を読んで赤鬼は激しく泣きます。赤鬼と青鬼の友情の美しくも悲しい物語でした。

教育の場でもあるいは会社のような組織の中でも、リーダーシップには「鬼の何とか」と『仏の何とか』の「2人3脚」があるとうまくいくといわれます。鬼の役だけでも仏の役だけでもうまくいかないことが多いものです。厳しいことを言う鬼役とやさしい言葉をかける仏役とがコンビを組むとうまくいきます。時にはみんなの前で意見が対立することも必要な場合があります。

しかし、ともすると鬼役は嫌われるから、あまりやりたがらないものです。時にはこの「青鬼」のようにその場にいられなくなってしまうことさえ生まれます。その場合にもっとも必要なことは「仏役」の「鬼役」への理解と支えなのです。

お互いの役割の違いを十分理解しながら、時には厳しく対立することもあるけれど、深いところで信頼の絆で結びついている関わりがあって、この「2人3脚」はうまくいきます。