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2人3脚

黒岩 英臣

今日の心の糧イメージ

「ギャー!赤よ、赤ッ!!」と、助手席から、雑巾を裂くような悲鳴があがりました。行く手に昼食の弁当を買おうと、コンビニらしき看板に目をこらしながら運転していた私は、あわてて急ブレーキを踏みました。危なかったー!

これが40年近く愛してきた私の妻でして、結婚当初だったら、「ギャー」ではなくて、もっと「キャー」に近い、もっと「可愛い発音で、しかも、もっとピッチも高かったですねー。

発音やピッチが気になるというのも、この日はベートーベンの第9交響曲の本番を指揮するために、ホールへと向かいつつあったからなのでした。しかもこの曲には大合唱がついていて、発音もピッチも難しいのです。

こんな風に、私達は普段、沢山の人と関わり、助けられ、また知らない間に他の人の支えになれる事もあるでしょう。もし、それが実現できているなら、私達それぞれは幸せと言えると思います。

私が毎回のように変わり映えせずに書いている聖書の言葉を、ここでまた言わせて下さい。私はそれよりも私の胸を打つ言葉を知らないのです。

主がこう言われる。「あなたは私が飢えていた時に食べさせ、病気の時に見舞ってくれた」。弟子が驚いて、「いつ私は主が飢えておられるのを見て食べ物を差し上げ、病気をなさった時にお訪ねしたでしょうか」。そこで主は言われる、「この最も小さい者の1人にしたのは、私にしてくれたことなのだ」。(参 マタイ25・35〜40)

さて、現実の私達の姿は、今日のお話の冒頭でお聞き頂いたような、あんまりスマートとは言えない、弥次喜多道中とか2人3脚というところかも知れません。いえ、ステージ上の私は全然別ですよ、オホン!でも、行き帰り、夫婦2人になれば、疲れもどっと出て、まさによれよれ、2人3脚ですねー。