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新しいいのち

村田 佳代子

今日の心の糧イメージ

マタイもマルコもルカも福音書に書いているキリストの教えに、「種を蒔く人」のたとえ話があります。

「種を蒔く人が種を蒔きに出て行った。蒔いている間に、ある種は道端に落ち、人に踏みつけられ、空の鳥が食べてしまった。ほかの種は石地に落ち芽は出たが、水気が無いので枯れてしまった。ほかの種は茨の中に落ち、茨も一緒に伸びて、押しかぶさってしまった。また、ほかの種は良い土地に落ち、生え出て百倍の実を結んだ。」(ルカ8・4〜8)

このたとえ話では種とは神のことばのことですが、かつて私は種に命のイメージを重ねて、絵を描いた事があります。

「新しいいのち」と題した20号のパステル画です。縦の構図で画面中央に胎児のように手足を曲げ、丸くなっている赤子を描き、画面下から両手がのび、その赤子を支えています。蒔かれた種と同じように、運命を暗示する4つのパターンを背景に描きました。

背景を2つに分け、右側はぬけるような青空が広がり、左側には暗雲がたちこめています。左下は戦火に逃げまどう群集、左上に向けて津波や竜巻など自然現象の恐怖を描きました。右側は、下は平和を象徴する花園を描き、上にはロケットを飛ばして未来を暗示しました。手は命を地上に送って下さる神の御手です。

新しいいのちが地上に生まれてきても、その命を取りまく環境によって始めから断たれてしまう命、折角生きていながら災害で断たれてしまう命、順調に人生を歩める命、未知の世界にチャレンジする命、いろいろある事を一つの画面に描きました。パステルだから出来る幻想的なぼかしを使ったオーバーラップ技法で、メッセージを伝えようとしました。好きな作品のひとつです。