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いつくしみの特別聖年

土屋 至

今日の心の糧イメージ

あるラジオの対談番組を聞いていたら、こんな質問が耳に入ってきました。「地球上で生息している動物のうちもっとも個体数が多く繁栄しているものはなんだと思いますか? その数は人間よりもはるかに多いものです。」

それは「アリ」なのだそうです。答えを聞いて納得する人も多いでしょう。アリがこんなに繁栄している幾つかの理由について、その番組に出演していた生物学者が述べておられたことがとても印象深かったので、あまり確かな記憶ではないけれど、言われたことを再現してみます。

『アリの社会ははっきりと分業システムができています。運搬係、倉庫係、見張り偵察係から、運搬中のかけ橋となる係までいます。ところがその係によって差別はなく、女王アリ以外はみな対等平等なのだそうです。

なぜそれが平等なのか、アリの社会にはこんな「慈しみのシステム」があるからなのです。』

これを聞いてわたしはすっかり感心してしまいました。

『アリは社会胃と個体胃という2つの種類の胃をもっていて、食べ物を見つけるとまず社会胃にいれます。でもそこでは消化吸収されることはなく、一時的に蓄えておくだけです。誰か別のアリに求められると求められたアリはかならずそのアリに食べ物を分かち合わなければなりません。そして他のアリに分かち合った量だけ自分も個体胃にいれて食べることができるようになります。』

他のアリに分かち合わないと自分も食べ物に有り付けない、他に分け与えて始めて自分も食べることができるというシステムは、対等平等で、慈しみがシステム化された優れたシステムであるように思います。全てのアリがそうなのかどうかはわかりませんが、人間社会もこういうふうにいけば貧困格差のない慈しみに満ちた社会になることでしょう。