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いつくしみの特別聖年

遠山 満 神父

今日の心の糧イメージ

昨年の12月、教皇フランシスコが開幕を決断された「いつくしみの特別聖年」は、現代の報復が連鎖する世界の中で、非常にタイムリーな取り組みです。

報復の連鎖は、旧約聖書の中の「目には目を、歯には歯を」の価値観から生じていると考えられがちですが、実際は、この考え方は被害者が加害者に過剰な償いの要求をしないように戒めた掟で、決して悪い考え方とは言えません。

例えば、喧嘩の時、相手から一言言われたら、相手に返すのは一言だけ、つまり相手に求める償いはその一言分だけで、感情に任せて何倍もの償いを求めないよう戒めた掟です。現代社会の刑法の考え方は、罪刑法定主義と言われますが、それも上記の掟が基礎となっています。

しかし、今、この考え方が限界に達していることを誰もが認めざるを得ません。これに代わる新しいビジョンが必要なことを誰もが感じています。

実にイエス様は、この考え方を超えるビジョンを、つまり報復の連鎖を断ち切る生き方を、言葉と行いを通して教えて下さいました。

イエス様は、「敵を愛し、迫害する者のために祈りなさい」と教えられました。(マタイ5・44)この教えを、言葉だけによってではなく、生き方によって、つまり、十字架の上で、人々から非難、中傷の言葉を浴びせられた時、父なる神に向かって、「父よ、彼らをお赦し下さい。自分が何をしているか知らないのです」と、迫害する人たちの罪の赦しの為に祈られた、その姿を通して教えて下さいました。(ルカ23・34)イエス様が、これをお出来になったのは、生涯に亘って、父なる神のいつくしみのみ顔をご覧になっていたからだと思います。

私たちも、毎日の悲喜こもごもの生活の中で、御父のいつくしみのみ顔を仰ぎ見る事ができるよう、静かな一時を持ちましょう。