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クリスマスとは

高見 三明 大司教

今日の心の糧イメージ

映画にもなった、第一次大戦中の逸話をご存知でしょうか。

ドイツ軍とフランス・スコットランド連合軍が、フランス北部の村で死闘を繰り広げていたときのこと、兵士たちは皆クリスマスだけは家族のもとへ帰りたいと願っていましたが、かないませんでした。

ところが、ドイツ軍の塹壕に何万本というクリスマス・ツリーが届けられ、スコットランド軍の駐屯所からは、バグパイプの音色やコーラスが響いてきました。そしてドイツのテノール歌手、ヴァルター・キルヒホフがドイツ軍の塹壕で歌っていたところ、百メートル先のフランス軍の将校がかつてパリ・オペラ座で聞いた歌声だと気づいて、拍手を送ったのです。

ヴァルターは、彼に挨拶するため、思わずクリスマス・ツリーを手に無人地帯を横切ってフランス軍の塹壕に駆け寄りました。すると、ドイツとスコットランド、それに、フランスの兵士たちが堰を切ったように集まり、バグパイプの伴奏に乗せて「きよしこの夜」を合唱したのです。

そして、各国の上官たちはクリスマス一夜限りの休戦に合意してシャンパンで乾杯し、兵士たちも銃を置いて片言の外国語で温かい交流の時を持ちました。この出来事は、クリスマスが平和な心を呼び覚ます日であることを物語っています。

イエスが生まれた夜、天使たちはその誕生を告げ、羊飼いは光に包まれ、幼子を訪ねました。そんないわばあわただしい中、母マリアはそれらの出来事をすべて心に納め、思いめぐらしていました。

クリスマスパーティーもですが、"神が人間になるというこの出来事が、人々に平和な心を抱かせるのはなぜだろう?"と、祈りながら、静かに思いめぐらす時間を持つことも大事なことではないでしょうか。