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無限の可能性

阿南 孝也

今日の心の糧イメージ

毎年9月に行われる文化祭は、本校の誇る行事です。閉会式では展示や演劇、合唱などの表彰を行います。審査も表彰もすべて、生徒たちの手で進められます。各パートチーフの高校生が講評を述べて、特に秀でたものを讃え合うのです。成績が発表されるごとに歓声が上がり、大いに盛り上がります。賞状とトロフィーを手渡すのが、校長としての私の役目です。

昨年の閉会式で舞台に出ようとしたときでした。式典係の生徒が私を手で制しながら、「先生、まだです。もう少し待ってください。私が合図を送りますので、それから中央へ進んでください」と言われてしまったのです。「これでは、どちらが生徒でどちらが先生かわからないな」と苦笑しながらも、彼の言う通りにしました。そして、無事に表彰式を終えることができました。ほんの数年前、幼くかわいらしかった中学入学時の彼を思い浮かべた時、感慨深いものがありました。1年1年の経験が積み重ねられて、大きく成長した姿を目の当たりにして、思わず目がうるんでしまいました。

ボルテージが最高潮に達するのは、クラス合唱の表彰です。中学1年生のボーイソプラノはかわいい限りですが、学年が進行するにつれて2部から3部、4部合唱となり、難易度の高い合唱曲が披露されます。毎年最優秀賞は、最高学年となり声が安定し、経験豊富な高校3年生の独壇場です。最優秀賞のクラス名が告げられると、全員が壇上に駆け上がり、受賞曲を歌うのが恒例となっています。惜しくも受賞を逃したクラスもアンコール曲に聞き入り、大きな拍手で讃える姿は清々しく、またもや目がうるんでしまいます。

貴重な経験が、彼らの人生に大きな力となることを祈りながら、私も心からの拍手を送るのです。