第112課 イエズスの死(マタイ 27・31~56)(ルカ 23・26~49)

 総督ピラトがイエズス様を十字架に付ける許しを与えたので、イエズス様は兵士たちによって肩に背負わされた重い十字架をお担いになって、ゴルゴタ、つまり「されこうべの場所」までお歩きになりました。

 イエズス様がそこに着かれると、兵士たちはイエズス様の衣服をはぎ取って大きな釘でイエズス様の手と足を十字架に釘付けて十字架を立てました。そしてイエズス様の右と左に2人の犯罪人の十字架も立てました。

 イエズス様の十字架の下に集まった大祭司たちはイエズス様をあざけり、「もし神の子であるならば、自分を救え。そして十字架からおりて来い」と言いました。もちろんイエズス様はご自分の命を救う力がありましたが、私たちの罪を償うために十字架上で亡くなられるという使命がありましたので、彼らのあざけりを無視なさいました。そして「父よ、彼らをおゆるしください」とおっしゃってその人たちの為にお祈りになりました。

 イエズス様は弟子たちにすべての人々を愛するように、そして自分の敵までも愛するように教えられましたが、十字架にかけられた時、ご自分を殺そうとしている人々のためにお祈りになって、その模範をお示しになりました。

 イエズス様の横で十字架にかけられている1人の犯罪人は大祭司たちと同じようにイエズス様をあざけりましたが、もう1人は彼をたしなめて、「われわれは自分のやったことの報いを受けるのだからあたりまえだが、このかたは何も悪いことをなさってはいないのだ」と言いました。

 そしてイエズス様に向かって、「あなたが王権をもって来られるときには、どうかわたしを思い出してください」と願いました。イエズス様は、「きょう、あなたはわたしとともに楽園にいるであろう」とお答えになりました。その人は多くの罪を犯したようですが、イエズス様に出会った時、その罪を悔い改めて、イエズス様のゆるしを願いましたので救われました。

 その時、十字架の下に集まった群衆の中に、イエズス様の母マリア様と12人の弟子の1人ヨハネが立っていました。イエズス様はマリア様とヨハネをご覧になってマリア様に「これはあなたの子です」とおっしゃり、ヨハネに「この方は、あなたのお母さんです」とおっしゃいました。イエズス様はその時、すべての弟子の代表者としてそばにいるヨハネを通して、ご自分の母を私たちの霊的な母としてお与えになったのです。

 聖書によりますと、イエズス様は朝の9時から午後3時まで十字架にかけられていらっしゃいましたが、12時から3時までの間、太陽は光を失って、闇が大地を覆いました。

 時間が経つにつれてイエズス様の苦しみはますますひどくなりました。1人の兵士が痛み止めに酸っぱいぶどう酒をイエズス様に飲ませようとしましたが、イエズス様はそれを飲まずに最後までその苦しみを耐え忍ばれました。

 3時ごろに、イエズス様は、「父よ、わたくしの霊をみ手に委ねます」とおっしゃって、息を引き取られました。その時の様子は聖書には次のように書かれています。「そのとき突然、聖所の垂れ幕が、上から下まで真っ二つに裂け、地が震い、岩が裂け、墓が開いた。・・・(兵士たちの)百人隊長、およびいっしょにイエズスの見張りをしていた人たちは、地震やいろいろの出来事を見て、非常に恐れ、『まことにこの人は神の子であった』と、言った」

 兵士たちは初めのうちは、大祭司たちと同じようにイエズス様をあざけりましたが、イエズス様の十字架上でのみ言葉と態度に感激し、また、イエズス様が亡くなられた時に起こった不思議な出来事を見て、最後にはイエズス様を信じるようになったのです。

(つづく)