第96課 姦通の女(ヨハネ 8・1~11)

 ある日イエズス様が神殿で教えられていると、ファリサイ派の人々が、1人の女の人をイエズス様のもとに連れて来て、「先生、この女は姦通をしているときに捕まったのです。モーセは法律の中で、このような女は石を投げつけて殺すようにと、わたしたちに命じています。ところで、あなたはどう考えますか」と尋ねました。

 ファリサイ派の人々がその質問をしたのはイエズス様を試みるためでした。イエズス様がその女の人を殺すべきだとおっしゃれば、人々はイエズス様を無慈悲な人と思って尊敬しなくなるであろうし、逆に、殺してはいけないとおっしゃったなら、人々はイエズス様がモーセに反対していられるように思って、イエズス様を信じなくなるだろうとファリサイ派の人たちは考えたのです。

 イエズス様はファリサイ派の人たちの質問には何もお答えにならないで、身をかがめて地面に指で何かを書き始められました。しばらくして、イエズス様は身をお起こしになると、「あなたがたのうち罪を犯したことのない人が、まずこの女に石を投げなさい」とおっしゃいました。すると、ファリサイ派の人々は年寄りの人から次々と、1人ずつ去って行きました。

 イエズス様は、すべての人が去って女の人だけが立っているのをご覧になると、「婦人よ、あの人たちはどこにいるのか。だれもあなたを処罰すべきとみなさなかったのか」とお尋ねになりました。彼女が「だれも」と答えると、イエズス様は「わたしもあなたを処罰すべきとはみなさない。行きなさい。そしてこれからは、もう罪を犯してはいけない」とおっしゃいました。

 勿論イエズス様は姦通の罪を軽くお考えになったのではありません。その罪の重さを認めながらも、その女の人にあわれみをおかけになりました。ですから、彼女の罪をおゆるしになってから、「これからはもう罪を犯してはいけない」とおっしゃったのです。

(つづく)