第72課 悪霊につかれた子(マルコ 9・14~29)

 聖書にはイエズス様がご変容の為に登られた山の名前は書かれていませんが、伝説によりますと、ガリラヤの南の方にあるタボール山であるということです。

 その時、イエズス様の他の弟子たちは山のふもとで待っていました。イエズス様が3人の弟子と一緒に山をお降りになった時、大勢の群衆は待っている弟子たちを取り囲んで、彼らと論じ合っていました。

 イエズス様が「何を論じ合っているのか」とお尋ねになると、ある人はイエズス様に近づいて、「先生、ものを言わせない悪霊につかれたわたしの息子を、あなたのもとに連れてまいりました。霊がこの子にとりつくと、所かまわず、押し倒します。この子はあわを吹き、歯がみをし、体が固くなってしまいます。それで、お弟子たちに、霊を追い出すように頼みましたが、だめでした」と言いました。

 人々がその息子をイエズス様のもとに連れてきますと、悪霊は彼を激しくけいれんさせました。そして、その子は地に倒れ、あわを吹きながら、転げ回りました。父親は「できますならば、どうかわたしたちをあわれんで、助けてください」とイエズス様に願いました。イエズス様は「できるならばと言うのか。信じる者にはどんな事でもできる」とおっしゃって、悪霊に「この子から出て行け」と命令なさいました。すると悪霊は子供をけいれんさせ、彼から出ていきました。その子は死んだ者のようになりましたが、イエズス様が彼の手を取って起こされると、子供は立ちあがりました。

 そのあとで弟子たちが「どうしてわたくしたちには霊を追い出せなかったのでしょうか」とイエズス様に尋ねましたところ、イエズス様は「このたぐいのもの(悪霊)は、祈りによらなければ、どうしても追い出すことはできない」とお答えになりました。

(つづく)