第65課 口のきけない人(マルコ 7・31~37)

 イエズス様が十字架上で亡くなられる迄、およそ1年を残すのみとなりました。その頃、イエズス様がガリラヤのどこへ行かれても、イエズス様の話を聞こうとして、大勢の人々が 集まってきました。しかし、ファリサイ派の人々は、たびたび群衆にまじってイエズス様をいじめました。

 ある時、休むためと、12人の特別の弟子に福音の意味をもっとくわしく教えるために、イエズス様は彼らと一緒にガリラヤを離れて、ツロとシドン、つまり地中海方面へ行かれました。しばらくの間そこに滞在なさってから、イエズス様は回り道をされてガリラヤ湖の東の岸へおいでになりました。前に述べましたように、そこはイエズス様が大勢の悪魔につかれた人から悪魔たちを追い払われた所です。

 イエズス様がそこに着かれると、さっそく人々は、耳が聞こえず舌も回らない人をイエズス様のもとに連れてきて、その人を治してくださるように頼みました。イエズス様はその人の両耳にご自分の指をさし入れられ、又、その人の舌にご自分のつばをつけられて、そして天を仰いで深く息をつかれ、「開け」とおっしゃいました。すると直ちにその人の耳は開いて舌のもつれも解け、はっきり口がきけるようになりました。

 その奇跡を見た人々は驚いて、「このかたのなさることはすべてすばらしい。耳の聞こえない人を聞こえるようにし、ものの言えない人を話せるようになさった」と言いました。

 騒ぎを起こさせないため、イエズス様は、この奇跡についてしゃべらないように、周りの人々に戒められましたが、彼らはイエズス様の戒めを聞かずに、その話を方々に伝えたため、その地方でイエズス様の評判はますます広まりました。

(つづく)